地形調査技術
地形は地球表面の起伏形態をあらわすにすぎませんが、地下の地質構造を反映していることが多く、その本質を理解するためには、それを構成する物質、発生起源、発達変化などを明確にしなければなりません。そこで私たちは、起伏形態が図化された地形図や、高空より撮影した空中写真などを使って地形を分類、区分し、その特徴をくわしく調べていきます。それにより、地形を構成する物質である地質を推定したり、地形の変化を予測したりすることができます。
次の項で、阪神コンサルタンツの地形調査から「空中写真判読」と「数値地形解析」の技術についてご紹介いたします。
空中写真判読
航空機などの飛行体から地表を撮影した空中写真を使って、地表面を立体的に目視することができます。これにより、地形の特徴をもとに地形面を区分し、活断層や地すべりなどに関係する地形を抽出します。
1. 活断層地形を抽出する
活断層はその活動によって地形上に特徴的な痕跡(断層変位地形)を残します。通常、1/8000~1/40000程度の空中写真を立体視して、この地形的特徴を解読することによって活断層やその可能性のある直線状の地形(リニアメント)を抽出・評価します。
リニアメントの抽出にあたっては、変位地形であること、あるいはその位置の確実性に基づいて、確実性の高いものからA、B、C及びDの4ランクに区分して表示しています。
判読においては、段丘面、扇状地面、火砕流や溶岩の堆積面等の地形面についても、区分・対比を行い、各地形面の年代や新旧を検討します。
※ 上図をクリックすると拡大図がご覧いただけます。
2. 微地形を判読する
より大縮尺の空中写真や地形図を用いて、微地形の判読を行います。
尾根や水系の横ずれ量などに関して、精度の高いデータを得ることができます。
また、1/2000~1/5000の空中写真を撮影した上で、その写真を用いて判読を行う場合もあります。
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3. 地すべり地形を判読する
地すべりは土砂、岩盤が集団で移動する現象です。地すべりの滑動によって地すべり地形が形成されます。
空中写真判読は地すべりの構造、運動、安定性などを評価する有効な手法です。
地すべりが移動するときは上部に滑落崖が地すべり土塊と不動地盤(岩盤)の境界へ延長した破壊面がすべり面です。地すべり土塊の地表形態は、しばしば小丘や陥没凹地などをともないます。このように、地すべり地形は周辺全体の地形とくらべて異常な地形ですから、広く全体を見渡してその地域の一般性を把握すると異常地形としての地すべり地形を見出すことができます。また、空中写真により、地すべり地の範囲と崩積土の流動方向、地すべりの運動区分(slump,glide,flowなど)も推定することができます。
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数値地形解析
地球上の標高や水深などの細密データが整備され、インターネットを通じて容易に入手できるようになっています。日本国内でも、標高データが国土地理院によって公開され、容易に入手できるようになっています。これらのディジタルデータを利用して、地形を表現することで、地形図や空中写真だけではわかりにくかったものが視覚的に容易に見えるようになります。 ここでは、神戸市街地を例にして、いろいろな表現を試みてみました。
左右に2枚の図を並べていますが、左は明石海峡大橋上空あたりから東側を見た感じの図で、右の図は、神戸空港の西側低空あたりから真北を眺めたくらいの図になっています。高さ方向を誇張して表現していますが、地形の特徴や地形と地質の関係(ここではあの阪神淡路大震災を引き起こした活断層の存在)などがおわかりいただけるのではないでしょうか。