FEM解析技術
FEM(有限要素法)解析について
地盤やコンクリート構造物などの固体から,地下水などの流体に至る,自然界の物体を有限個の要素に分割し,要素ごとの力や運動量,圧力などの釣り合いを考えて連立方程式を立て,電算機で数値的に解を求める方法をFEM(有限要素法)解析と言います。この解析法は要素の大きさ・形状などをコントロールでき,より実際の対象に近い忠実なモデル化が可能であるという特長があります。
FEM(有限要素法)は土木分野のみならずさまざまな分野で広く利用されています。また設計検討・自然現象の解釈・予測など,さまざまな応用が考えられます。当社では以下に紹介する各種の事例を始め,種々の問題解決にFEM解析を用いています。
このページでは、当社の「FEM解析技術」から、
「三次元FEM解析」
「動的FEM解析」
「浸透流解析」
3つのFEM解析技術について順に、ご紹介します。
三次元FEM解析 -軟弱地盤地域における近接施工-
現在の橋梁形式による道路から盛土形式に変更する場合の解析事例です。この事例では、通行止め期間を設けることができないため、橋桁を片側ずつ撤去して盛土形式に切り替えることが条件となっています。このような条件の場合、橋梁基礎の橋桁撤去荷重(除荷)による浮き上がりと盛土による沈下が問題となりますが、二次元解析ではその影響評価が困難となります。
この三次元FEM解析は荷重バランスを考慮した変形予測を行うことができ、安全かつ合理的な工事をおこなうための有効な手段となります。▼下図をクリックすると拡大図がご覧頂けます。
■ 解析例
▼ 解析モデル図
▼ 初期応力状態
動的FEM解析
■ 谷埋め盛土の地震応答解析
谷埋め盛土では地震発生の際に、谷埋め部分での応答加速度の増幅が問題となっています。しかしながら、これまでの事例ではおもに2次元での解析が行われており、加速度の増幅を精確に表現できていないのが実情です。
阪神コンサルタンツでは、谷埋め盛土における地震時応答解析において、3次元でモデル化を行うことで、より現実に近い地震時応答性状を表現しています。
ここでは、3次元モデルと2次元相当モデルの応答加速度の違いを紹介します。
- ▼ 解析モデル図
- 入力地震波
- 2004年新潟中越地震において新潟県山古志村竹沢で観測された地震波を使用する。
解析結果
- case1:基礎地盤と同等(3次元モデル)
- case2:盛土部と同等(2次元相当モデル)
以上のように、モデル化の違いにより地震時応答加速度の違いが分かり、3次元モデルの解析では、谷埋め部の応答加速度の増幅が確認できます。
浸透流解析
降雨データ、地下水データ等の資料により周辺の地下水位を三次元で解析することができます。河川工事やトンネル工事により地下水位変動が懸念される場合、広範囲で影響を推定することができます。
上図は、天井河を大規模な掘削により平地河川化した場合の地下水位低下の影響を3次元飽和・不飽和浸透流解析(FEM)で予測した結果を表したものです。
上段の図は、調査により得られた河川改修前における地下水位標高分布を数値解析用モデルで再現した結果で、カラーコンターは赤色系から青色系に向かって水位標高が低下することを意味しています。本図より、オレンジ色線で表される調査結果と白線で表される再現解析結果が良く一致していることがお分かりいただけると思います。
下段の図は、青色で示した現況河川を桃色で示す形状に河川改修した場合の水位低下量を表したものです。当該河川では、河川改修により最大で十数mの河床低下が生じる計画となっており,河川改修区間を中心として広範囲にわたり地下水低下の影響が予測されました。そして、地下水低下領域には、○印や□印で示される家庭用の浅井戸が多数分布しており、地下水利用に対して影響が生じることが判明しました。本検討ではまた、こうした結果を踏まえた対策工の計画も、影響予測と同様に浸透流解析を利用して行っています。