反射法探査技術

反射法探査について

大阪中之島での大規模反射法探査 1987年(P波インパクター震源車 車重6t)
大阪中之島での反射法探査 1987年
(P波インパクター震源車 車重6t)

反射法探査は、地表面等で人工的に地震波を発生させ、物性の異なる地層境界面から跳ね返ってくる反射波を地表等に設置した受振器で検出することにより、地下の2次元断面を推定する技術です。

陸上における反射法地震探査では、「P波(縦波)を測定の対象とするP波反射法探査」と「S波(横波)を測定の対象とするS波反射法探査」の2種類があります。

一方、海域においては海面から音波を発射し、地層の境界面で反射して戻ってきた反射波を受振器でとらえることにより、陸上での探査原理と同様に地下構造を調査することができます。このような手法を「海上音波探査」とよびます。

次項では、陸上における「P波反射法探査」、「S波反射法探査」、海上における「海上音波探査」の技術について、順にご紹介します。

そして最後に、沿岸地域で行われる「海陸統合探査」についてご紹介します。

P波反射法探査

P波反射法探査は後述のS波反射法探査に比べ発生が容易である特徴を持ちます。比較的浅い深度から1000mを越える大深度まで適用できます。人工的に地震波を発生させるための震源として、弊社では探査深度に合わせてインパルス型(ダイナマイトや油圧インパクターなど)や制御型(バイブレータ)を用いて探査を行います。

■ P波震源車
油圧インパクター(JMI-200 two)
油圧インパクター(JMI-200 Ⅱ)
バイブレーター(Enviro Vib)
バイブレーター(Enviro Vib)
大型バイブレーター(Y-2400)
大型バイブレーター(Y-2400)

下図は、P波反射法探査での観測状況をイメージ化したものになります。

P波反射法模式図

こうしたP波探査は、様々なところで行われており、特に近年実施されてきた活断層調査や地下構造調査などで、比較的広い範囲の地質構造を調べる際に利用され、多くの成果が得られています。

■ 大型バイブレーターを震源とするP波反射法探査(事例)

図は大阪平野南部の高石市~堺市で実施した大型バイブレーターを震源とするP波反射法探査で得られた地盤の断面です。深度千数百メートルの基盤岩の複雑な形状が、上町断層帯と共に明瞭に捉えられています。この探査結果によって大阪に大きな地震動をもたらす可能性の大きい上町断層帯の強震動予測の精度を更に高めることができます。

▼ 下図をクリックすると拡大図がご覧いただけます。

大型バイブレーターを震源とするP波反射法探査(大阪平野南部の高石市~堺市で実施)
参考文献: 上町断層帯における重点的な調査観測 平成24年度 成果報告書
文部科学省研究開発局
国立大学法人京都大学防災研究所

S波反射法探査

一般的にS波の速度はP波の速度に比べてかなり遅く、その結果、同一の周波数においてはS波の波長が短いため、S波反射法探査では高分解能の地質構造を把握できる利点があります。

広域にわたる地盤・地質をP波反射法探査で観測したのち、より詳細なデータの必要性があると判断されたポイントに絞って、S波反射法探査を行うといった場合も多くあります。

住之江撓曲(上町断層系)におけるS波探査結果

S波探査結果(上図)からは、地層の連続状況とS波速度の分布状況だけでなく、不整合面も把握することが出来ます。また、ボーリング調査の結果と組み合わせることにより、従来のボーリング調査のみの推定断面図に比べて、より多くの情報を得ることができます。 

■ S波震源車
大型バイブレーター(S震源)
大型バイブレーター(S震源)

震源には探査深度に合わせてインパルス型(油圧式S波震源)や制御型(バイブレータ)を用います。当社では極浅層から500mを超える深部まで調査を行った実績があります。

■ 大深度S波反射法探査(事例)

大型S波バイブレーター車は石油公団がアメリカからレンタルしたもの

当社は1992年大阪市北部の淀川の河川敷を利用してS波バイブレーターを用いた探査を実施しました。上(写真)のS波バイブレーター車は石油公団がアメリカからレンタルしたものを2台、1週間ほど借用しました。これは車体重量が1台25トンもあります。通常の縦に揺らすP波バイブレーターではなく、横に揺らすS波バイブレーターなので、カウンターマスが大きくないと地面に力が伝わりません。そのため車体重量が大きいのです。

探査測線は淀川の北岸の河川敷に延長約4Km設定しました。次の図が反射法の結果得られた深度断面図です。1,400mあたりに非常にきれいに基盤岩が見えています。国内においてS波でこれだけきれいに深部構造が捉えられた例はほとんどなく貴重なものです。さらにこの探査で得られたS波速度分布は重要な情報として、大阪平野の3Dモデリングに生かされています。 (▼ 下図をクリックすると拡大図がご覧頂けます。)

大阪の淀川河川敷におけるS波バイブレータ反射法探査の結果得られた深度断面図

海上音波探査

ストリーマーケーブルの曳航
ストリーマーケーブルの曳航

地球表面の7割は海です。地下構造を正しく把握するために海域における調査が必要になる場合があります。反射法探査は、陸域だけでなく海域でも実施されます。通常、海域と陸域は、個別の調査として行われる場合が多いのですが、沿岸地域では陸域と海域の調査を総合的に行うことも必要と考えられます。

■ 海上での震源について

海上音波探査では、一般的に圧搾空気の放出を利用したエアガンや水の瞬間放出を利用したウォーターガンを震源として用います。地層境界からの反射波は、海水内で圧力変化として伝わることから、受振には、ハイドロフォンと呼ばれる圧力計が用いられます。計測は、複数のハイドロフォンを組み込んだケーブルを海中で曳航する方法(ストリーマケーブル曳航方式)や海底にケーブルを敷設する方法(オーシャンボトムケーブル[OBC]方式)により行われます。(※下の探査イメージ図をクリックすると拡大図がご覧いただけます)

ストリーマケーブルによる探査イメージ
ストリーマケーブルによる探査イメージ)
オーシャンボトムケーブル(OBC)による探査イメージ
オーシャンボトムケーブル(OBC)による探査イメージ
■ 海上音波探査の結果

下図は神戸沖の大阪湾で実施した海上音波探査(P波)の結果です。海上音波探査技術により、海底より下の地盤を調査することが可能になります。

神戸沖の海上音波探査(P波)の結果の3D表示(南西方向上空から見る)
神戸沖の海上音波探査(P波)の結果の3D表示(南西方向上空から見る)

沿岸地域で行われる、海陸統合探査について

最後に、沿岸地域での陸域と海域の統合探査についてご紹介します。
下図は陸上における「P波反射法探査」と海上における「音波探査」を組み合わせて同時に行う際のイメージになります。図は海中敷設ケーブル(ベイケーブル)と陸上測線、海上エアガン発震と陸上バイブレーター発震を組み合わせた作業状況を示しています。
(▼ 下図をクリックすると拡大図がご覧いただけます)

沿岸地域での陸域と海域の海陸統合探査イメージ1 海上では発震船からエアガンを使った発振を海底のハイドロフォンで受振します。一方陸上では震源車からP波発振を地震計は受振します。海底のハイドロフォンと陸上の地震計は陸上ケーブル(海底敷設ケーブル)で繋がっていて、海上では観測船が、陸上では観測車がデータを計測します。

沿岸地域での陸域と海域の海陸統合探査イメージ2 こちらは探査イメージを断面で見た図になります。発震源から発振され、地層境界面に反射したP波が地震計に到達する様子が矢印で表されています。

我が国は海岸近くに人口が集中し,大都市や重要なライフラインもまた海岸近くに立地しています。活断層はこのような沿岸域にも多く存在するので、このような海陸統合探査技術が必要となります。